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年に1回秋の文学フリマ東京にて新刊とバックナンバーを販売しております。

夕方の紙

2022/11/20発行 価格:100円

 

転職、出産、博士論文提出、繁忙などの諸事情により、2022年は毎年書き下ろしの「夜の紙」ではなく、ちょっとゆるめな「夕方の紙2022」を刊行します。

 

 

内容紹介:


①モネは光と空気を一枚の絵に記す。
人生は過ぎゆく。人は年を取る。時は流れる。筆者は幼少期から「今」しか感じられないその時々の情緒を記録する、記す方法を求めていた。箱根の美術館でそう気づくに至った系譜を記憶を辿りながら書いていく。
「今」

②出産して間もない我が子を見失った。引き取りに行くと「あなたの引き取り権利が持てるのは3番目になります」と冷たく言い放たれる。夢と現実を絵と文章で書き分けながら、妊娠期と出産期の変化。子どもへの眼差しの変化を描く。
「夢の話(産後ルポ)」

③今年、博士論文を書き上げる筆者は修士課程に入院する時の思い出を綴る。指導教授に無事就いてもらえるまで、また授業でのティーチアシスタントなどを通して大学教員陣とのシリアスな場面。それを喜劇のようなユーモラスなタッチで描く。
「大学院日記」

④「うさぎ追いし彼の山」と言う歌詞は我々の心に夕焼けの風景を思い起こさせる。では海外の夕方はどのような風景だろうか。
筆者は10年前、スペインに滞在していた。「夕方の五時は恐ろしい」と言うのはゴダールの気狂いピエロでのセリフである。それは夜の始まり。スペインでの風景を描きながら「夕刻の画家」について描く。
「イベリア半島の『夕刻の画家』たち」


夜の紙 Vol.5

特集「働く」

2021/11/23発行 300

 

福祉の仕事をしている筆者には障害を持つ姉がいた。姉や家族の前で無力でありながらも何故に人に関わる仕事を選んだか。過去から現在を見つめ直す【姉】

 

絵を描いたり、家具作りなど物作りが好きな一方で会社で「働くこと」は嫌い。組織の中で求められるKuTooとそれでも好きなことして残る「仕事」とは。働くことを正面から問うた【Work(s)

 

大学講師=教育者?はたまた研究者?研究が好きでそのために筆者は研究職を選んだ。しかし、それだけでは食べていくことが困難な道だった。人文系博士の窮状と家族や身近な人から向けられる言葉と現実との乖離を丹念に描く【研究という「仕事」あるいは「趣味」 

 

働くこと、賃労働、資本主義の外側を「虫」に跳躍することで志向する。それは言葉を紡いではたどり着けない。生成変化すること。しかし、言葉を紡ぐことでしか人はそこに近付くことも出来ない。それを本書で試みる【虫たちのアナーキズムに向けて】

 


夜の紙 Vol.4

特集「人間」

2020/11/22発行 200円

【人と福祉現場】
対応困難ケースとその福祉現場で立ち現れてくるものを如実に描いた。

【在処】
社会的な身体と「魂」なるものを誰にでもある日常から描いた漫画エッセイ。

【人間の淵】
アウシュヴィッツで生きることを許された人々がいた、それは労働力として。その末に「人間性」を奪われた人々を通して人間を考える。

【人間の経済】
株価とセットで語られる市場、だが本来の歴史的な「市場」とは。9月に急逝した気鋭の文化人類学者D・グレーバーに寄せて。

の4篇です。

夜の紙 Vol.3

特集「私の日常」

2019/11/24発行 200円


夜の紙 Vol.2

特集「他者」

2018/11/25発行 200円

【遠い他者】

 

「遠い他者」は身近な他者が遠ざかってしまう瞬間の気付きを書いた作品である。幼子を大声で怒鳴り、言い分も聞かずに叱りつける母親。街角でよく見かけるその風景への嫌悪感を起点に、彼は知的障害を持つ、とある男性との思い出に行き当たる。「他者」というテーマに正面から向き合い、描かれた作品のように思う。

 

【ふるさと】

 

「ふるさと」は,「2007  5 月京都」「2012  4 月新宿」「2015  8 月新宿」「2017  1 月三 鷹」「2017  6 月横浜」「2017  8 月新宿」「2017  9 月パリ」と6つの時空を異にする舞台での 記憶の断片を描き連ねた漫画エッセイである.

彼女は必死に「居場所」という名の「ふるさと」 を探り当てようと模索している軌跡がうかがえる.最後に異国を訪れた彼女は, 自分を見つめる1枚の裸婦画に出会う.人間と触れ合うよりも,1枚の絵に彼女 は「他者」を感じたのかもしれない.そして,彼女にとって「他者」は「自分の存在を見つめるもの」なのかもしれない自分の存在を認める「他者」な くしては,自らを世界に定位することができないのだ.

 

【身体の他者性】

アカヒモの記事では四十二度まで発熱した経験を叙述的に書くことで、身体の免疫機能から引き起こされる発熱が「私」の意識を朦朧とさせ、あるいは発熱によって死に至かねないと言う状況を浮き彫りにした。本論では「私=身体」と言う境界線自体を壊し、その「当たり前」を誰にでも身近な事例を出しながら壊している。そのアカヒモの視点が見事であり、本誌をより広がりがあるものにしてくれた。第二号の土台になる記事であり、ぜひ一度手に取りご一読頂きたい。

 

【闘牛】

スペインの闘牛をめぐって生じたある事件を通じて,複数の他者性のレイヤーを描いた作品. 牛オピパロを殺すはずだった闘牛士フリオ・アパリシオが逆にその喉を切り裂かれ瀕死に陥った事 故から話ははじまる.

そして,さらにその闘牛の世界に魅了された記者エルネストの内面には「リアリスト」,「アフィシオナード(闘牛狂い)」,「ナショナリスト」という異なる 3 つの性質がそれぞれ互いにとっての 他者性を保ちながら混在している こうした他者性のレイヤーを通過することで,上記の悲惨な事故——闘牛士が闘牛に喉を切り裂 かれた事故——は,それとは全く異なる出来事として読者の前に浮かび上がることになる.それも, 単なるスペクタクルとして浮上するのではない.この作品の独特な文体が,読者にその出来事を体験としてよみがえらせるのだ.

 

※頒布物「夜の紙 番外編 Vol.1」から各記事の紹介文を再構成して掲載しております。